睡眠でしっかり休養がとれていますか?寝つきが悪くなったり、早く目が覚めやすくなったりといったことがあれば、質の良い睡眠がとれていないかもしれません。快眠できないと、生活習慣病のリスクを高め、症状を悪化させることにつながります。そこで、今回は質の良い睡眠に役立つ栄養素と、おすすめレシピを4つご紹介します。
質の良い睡眠とは?
睡眠は量より質
体の不調や、精神的なストレスが原因となり、日本人の5人に1人が何らかの障害を抱えているといわれている睡眠。そもそも質の良い睡眠とはどのようなものをいうのでしょうか?「睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分」というのが専門家の見解です。睡眠はどのくらいの時間眠れるか(量)よりも、どのくらい深く眠れるか(質)が大切です。睡眠の質は年齢とともに変わってくるため、「何時間寝たか?」と人と比べることなく、目覚めがすっきりするかを目安にしましょう。
質の良い睡眠をとるためには
睡眠中は浅い眠り(レム睡眠)と、深い眠り(ノンレム睡眠)を繰り返しており、眠りの質を高めるには、入眠後、素早く深い眠りに入ることが重要です。睡眠の悩みがある方は、生活習慣を見直してみましょう。以下の生活習慣が、睡眠の質を良くするとされています。
・朝日を浴びて体内時計を整える
・朝食はしっかり、夕食は腹八分目
・定期的な運動習慣
・昼寝は短く
・夕食後のコーヒーなどのカフェインを含む飲み物や、寝酒は避ける
などです。厚生労働省では、科学的な知見に基づいて「健康づくりのための睡眠指針2014」を策定しています。睡眠環境の見直しに役立つ内容ですので、参考にしてみてください。
■参考URL 厚生労働省「スマート・ライフ・プロジェクト」公式サイト内
「睡眠の質を上げてカラダもココロも健やかに」
https://www.smartlife.mhlw.go.jp/minna/sleep/
質の良い睡眠をサポートする栄養素とは?
質の良い睡眠のためには、生活習慣を整えることが大切です。食事は1日3食をバランスよく食べるようにしましょう。ここでは睡眠の質を高めるのに役立つ栄養素について解説します。次に紹介する栄養素は、多くの食べ物から取ることができるため、毎日摂取することは難しくはないですが、特に意識して摂ると睡眠の質向上につながりますよ。
トリプトファン
質の良い睡眠をサポートするのに役立つ栄養素といえば「トリプトファン」です。人の体でつくれない必須アミノ酸のひとつで、精神を安定させるセロトニンなどの原料となります。メラトニン(睡眠ホルモン)は、トリプトファンからセロトニンを経て作られるため、快眠のためには不足しないようにしたいですね。セロトニンが足りないと、睡眠障害やストレス、うつなどの原因にもなりかねません。良質なタンパク質を含む食品に多く含まれるため、毎日しっかり摂りましょう。
【おすすめ食材】魚類や肉類、卵、大豆製品、乳製品、バナナなど
DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHA(ドコサヘキサエン酸)も睡眠の質向上に役立つ栄養素といわれています。青魚に含まれるDHAは、脳の機能に重要な役割を果たしますが、2014年にオックスフォード大学で行われた研究では、睡眠の質を上げることがわかりました。まだ研究段階ですが、DHAはメラトニンのもととなる、セロトニンの働きをサポートするからではないかとされています。また、DHAには神経伝達物質の調整作用があり、うつに有効なのではないかといわれています。抑うつ感から睡眠の悩みがある方は、DHAも積極的に取り入れましょう。
【おすすめ食材】さば、いわし、あじ、さんまなどの青魚、まぐろ、かつお、さけなど
グリシン
グリシンは体内でつくられる非必須アミノ酸のひとつ。グリシンは、速やかに深い眠りに到達させ、さらに眠りの時間を増やして、睡眠を安定させる効果も発見されています。グリシンは食品にも含まれますが、睡眠の悩みがある方は、サプリメントを試すのもよいでしょう。
【おすすめ食材】えび、ほたて、かに、いか、かじきまぐろなど
GABA(ギャバ)
GABA(ギャバ)はγ-アミノ酪酸をさします。Gamma Amino Butyric Acidを略して、GABA(ギャバ)と呼ばれています。GABAは、交感神経の活性化を抑制し、ストレスをやわらげる働きがあるほか、睡眠の質の改善に役立つ機能があることが報告されています。GABAの合成にはビタミンB6も必要で、マグロやかつお、牛レバー、豚レバー、鶏レバー、バナナ、玄米ご飯などに含まれています。GABAと一緒にビタミンB6も摂りましょう。
【おすすめ食材】発芽玄米、トマト、カカオ(チョコレート・ココア)など
ビタミンB12
ビタミンB12も睡眠障害などの改善に関わっているとみられています。ビタミンB12は、末梢神経の機能維持に働き、不規則な生活習慣が原因の不眠などにも効果があるのではないかとされています。ビタミンB12は、基本的に動物性食品にしか含まれていませんが、例外として海藻類にも含んでいるものがあります。野菜や果物にはビタミンB12は全く含まれていないため、植物性食品に偏った食事をしている人は、不足に注意です。
【おすすめ食材】牛レバー、豚レバー、牡蠣、さんま、いわし、プロセスチーズ、あさり、焼きのりなど
睡眠の質向上に役立つレシピを4つ紹介
質の良い睡眠をとるためにおすすめのレシピを4つご紹介します。バランスの良い食事が基本ですが、睡眠の質をサポートする食材も積極的に取り入れて、快眠を手に入れましょう。
さばとなすのしょうがみぞれあん
さばにはDHAが豊富に含まれています。片栗粉をまぶすことで、さばの身がふんわりとして食べやすくなりますよ。大根おろしの酵素が消化吸収を助けてくれます。
【材料:2人分】
・さば…2切れ(160g)
A
|おろししょうが…1かけ分(6g)
|しょうゆ…小さじ1
・なす…小2本
・サラダ油…小さじ2
・片栗粉…小さじ2
・大根…6cm
・ねぎの小口切り…適宜
B
|しょうが汁…小さじ2
|水…100ml
|だしの素…少々
|塩…少々
|みりん…大さじ1
|しょうゆ…小さじ1
・片栗粉…小さじ2
・水(水溶き片栗粉用)…小さじ2
【作り方】
- 1.さばは小骨を取り、2cm幅に切ってAをつける。なすは3cm程度の乱切りにする。大根はおろして水気を切る。
- 2.フライパンに油を熱し、水気を切って片栗粉をまぶしたさばを入れる。
- 3.2.になすを加えて柔らかくなるまで炒める。さばとなすを取り出して器に盛る。
- 4.鍋にBを加えて煮立たせ、大根おろしを加える。水溶き片栗粉でとろみをつける。
- 5.3.に4.をかけて小口ねぎをのせて出来上がり。
ビビンバ丼
フライパンひとつでできるビビンバ丼は、洗い物が少ないのが魅力です。牛ひき肉からトリプトファン、発芽玄米からGABAが補えますよ。
【材料:1人分】
・牛ひき肉(または合いびき肉)…80g
A
|しょうゆ…小さじ2
|白すりごま…小さじ2
|ごま油…小さじ1
|にんにくのすりおろし(市販品でもOK)…少々
・もやし…50g
・にんじん…1/4本
・ニラ…1/4束
・発芽玄米ご飯…150g
・あればコチュジャン
【作り方】
- 1.Aの調味料を混ぜておく。ニラは4cm幅切り、にんじんはせん切りにする。もやしは洗っておく。
- 2.フライパンに①の牛ひき肉とAを入れ、軽く炒める。上にもやしとニラ、にんじんをのせてふたをする。強火に熱して煮立ってきたらふたを取り、中火にして混ぜながら炒りつけて火を通す。
- 3.器に発芽玄米ご飯を盛り、②をのせてお好みでコチュジャンをそえて出来上がり。
サバ缶とキャベツのホットサンド
サバ缶にもDHAがたっぷり。サバの味噌煮缶はチーズと相性がよく、たんぱく質も摂れます。チーズからトリプトファンとビタミンB12が補えます。朝からホットサンドをモリモリ食べて、体内時計をリセットすると睡眠の質改善が期待できますよ。
【材料:1人分】
・食パン(8枚切り)…2枚
・サバ味噌煮缶…1/2缶
・スライスチーズ(とろけないもの)…1枚
・キャベツ…1枚分
・きゅうり…1/3本
・マヨネーズ…大さじ1/2
・粒マスタードまたは練り辛子…小さじ1
【作り方】
- 1.キャベツときゅうりは5mm幅のせん切りにする。サバ缶は、缶から出して汁を切り、軽くほぐしておく。
- 2.マヨネーズ・粒マスタードを食パン2枚にそれぞれ片面にうすく塗る。
- 3.スライスチーズ→サバ缶→せん切り野菜の順にはさむ。
- 4.フライパンを弱火に熱し、具をはさんだ食パンを焼く。重しにお皿などを乗せる。
片面を1分半ほど焼き、焦げ目がついたらひっくり返して、もう片面も焼く。半分に切って皿に乗せて出来上がり。
【ポイント】
・野菜のシャキシャキ感を出すためには、太めのせん切りにするのがポイントです。
・スライスチーズをチェダーチーズに変えると、違った風味を味わうことができます。
・スライスしたトマトなどをはさんでもおいしいサバ缶ホットサンドができます。
バナナヨーグルト
バナナヨーグルトは、おやつや朝食におすすめのレシピです。バナナとヨーグルトにはトリプトファンが多く含まれています。トリプトファンは、脳内の神経伝達物質である、セロトニンなどの原料になります。睡眠を促すホルモン「メラトニン」は、セロトニンを介して作られるため、質の良い睡眠をとるためには、しっかり摂りたいですね。
【材料:1人分】
・無糖ヨーグルト…100g
・バナナ…1本
・はちみつ…適宜
【作り方】
1.バナナはひと口大に切る。
2.ヨーグルトとバナナを器に入れて混ぜ、はちみつをかける。
(まとめ)睡眠の質を高める食事を取り入れて健康的な生活を
睡眠の質を高めるために取り入れたい栄養素と、おすすめレシピを4つ紹介しました。質の良い睡眠をとるためには、1日3食をバランスよく食べることが基本です。「最近よく眠れない」と感じたら、普段の食事内容を振り返り、紹介した栄養素を含む食品を積極的に摂ることもしてみましょう。
【参考図書・URL】
・厚生労働省「第3章 より健康的な睡眠を確保するための生活」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000036721.pdf
・厚生労働省「健康寿命をのばそう「質のいい睡眠で、カラダも心も健康に。」
https://www.smartlife.mhlw.go.jp/minna/sleep/kenkou
・「新しいたんぱく質の教科書」上西一弘著 池田書店
・「一生役立つきちんとわかる栄養学」飯田薫子・寺本あい監修 西東社
・「図解でわかる!からだにいい食事と栄養の教科書」本多京子監修 永岡書店
管理栄養士・健康運動指導士・ライターとして活動。 特定保健指導では生活習慣病予防を、介護予防事業では高齢者のフレイル予防と、 食事と運動の両面から健康づくりのお手伝いをしています。