「最近、お肉が食べられなくなった……」「ごはんと味噌汁と漬物だけで十分」などと簡単な食事で済ませることが多くなったという方は多いのではないでしょうか。このような食事に疑問を抱くことなく「粗食はヘルシーで健康的」と思っているのであれば、残念ながらそれは誤解です。お肉などのタンパク質をきちんと摂取しないと、栄養不足で健康に悪影響をおよぼします。そこで、中高年の方におすすめしたいのが「植物性タンパク質」です。この記事では、タンパク質の重要性や、なぜ中高年の方に植物性タンパク質がおすすめなのかを解説します。植物性タンパク質の多い食品や注目を集めている理由についてもご紹介するので、参考にしてみてください。ぜひ、あなたの食卓に植物性タンパク質をとり入れていつまでもイキイキとした毎日を目指しましょう!
そもそもタンパク質はなぜ大事なのか
私たちが笑ったり、泣いたり、考え事をしたりなど日常生活を送れるのは、「タンパク質」のおかげといっても過言ではありません。なぜなら、タンパク質は私たちの筋肉や内臓・骨格・お肌・髪の毛・爪・細胞といった体の組織を作る材料になるからです。さらに、健康的な体の維持と成長に関わる「ホルモン」や代謝に必要な「酵素」を作る材料でもあります。つまり、タンパク質は私たちが生きるために欠かすことのできない栄養素なのです。
タンパク質をとるうえでポイントとなるのが、「良質なタンパク質」かどうかです。良質なタンパク質とは、人間の体内ではつくり出すことのできないアミノ酸(必須アミノ酸)がバランス良く含まれている食品のことを言います。良質なタンパク質は体内で吸収しやすく、体の材料として効率的に使われるため、健康な体の維持に必須なのです。
タンパク質が不足すると
粗食によって、タンパク質が不足すると体にどのような影響があるのでしょうか。
タンパク質不足は老化を早める
中高年からは、粗食による栄養不足に注意が必要です。粗食によりタンパク質が不足すると、筋肉や骨・血管がもろくなり、すぐに体調を崩してしまいます。また、お肌や髪の毛もボロボロになって、見た目にも老けて見えてしまうのは言うまでもありません。
タンパク質不足は脳も老化させる
タンパク質は、脳を作る栄養素だということも忘れてはいけません。栄養不足で血管がもろくなることにより、脳の毛細血管で微小な脳梗塞を起こす場合もあります。最近、「忘れ物が多くなった」などうっかりミスが増えたと感じる人は注意が必要です。
植物性タンパク質はなぜ中高年におすすめなの!?
植物性タンパク質が豊富な食品は、「高栄養・低脂質」であっさりした食品が多いので、肉など脂っこい食事が苦手という中高年の方でも無理なく食べることができます。また、肉や魚といった動物性食品には食物繊維はほとんど含まれていません が、植物性タンパク質を多く含む食品(豆類・雑穀)には「食物繊維」が豊富に含まれているのも嬉しいポイントです。 肥満や生活習慣病を予防・軽減するためにも植物性タンパク質を摂取することをおすすめします。さらに、最近の研究により「植物性タンパク質」をたくさんとる人ほど死亡リスクが低いことが明らかになっています。 そして、お肉を植物性タンパク質に置き換えることで、死亡リスクが減るという報告もあるのです。 この研究では、同じカロリーの食事のうち植物性タンパク質は、健康的に長生きするために重要な栄養素と言えるでしょう。
植物性タンパク質を含む食品について
植物性タンパク質はどのような食品に含まれているのでしょうか。食品100gあたりのタンパク質量も併せて見ていきましょう。
食品名 | 食品100gあたりの タンパク質量(g) | ポイント |
大豆(ゆで) | 14.8 | 大豆は、「畑の肉」と呼ばれるほど栄養価に優れた食品です。 「良質なタンパク質」として、肉と同等のアミノ酸バランスを誇ります。 |
枝豆(ゆで) | 11.5 | 大豆になる前の若サヤが「枝豆」です。若くても大豆と同じように「良質なタンパク質」が含まれています。カロテンやビタミンC・葉酸・カリウム・カルシウムといった栄養素を豊富です。 |
木綿豆腐 | 7.0 | 大豆製品の代表格ともいえる「豆腐」は、大豆と同様に高たんぱく低カロリーの食品です。 ダイエッターの強い味方として、世界中で親しまれる食材となっています。 |
そば(ゆで) | 4.8 | そば粉のタンパク質には必須アミノ酸の一種であるリジンが多く含まれています。リジンは、私たちの主食である「ごはん」に不足している必須アミノ酸です。主食をそばにすることで、食事全体のアミノ酸バランスを良くして、質の良いタンパク質を補給することができます。 |
ブロッコリー | 3.9 | タンパク質の他にも、ビタミンCやカリウム・葉酸・β-カロテン・ビタミンKが豊富で、健康維持に欠かせない栄養素が詰まった優秀な野菜です。 |
アスパラガス | 2.6 | アスパラに含まれる「アスパラギン」という栄養素は、体内で「アスパラギン酸」というアミノ酸に変化し、新陳代謝を活発にしてタンパク質合成をサポートします。疲れているときにおすすめの野菜です。 |
アボカド | 2.1 | アボガドは「森のバター」という異名を持つほど脂質が多い“果物” |
植物性タンパク質が注目される理由
「植物性タンパク質」は、地球にやさしい食資源としても注目を集めています。
今、世界中で「お肉を減らしましょう」と叫ばれていることをご存じでしょうか? そして、肉に代わるタンパク質源として「植物性タンパク質」に注目が集まっているのです 。では、なぜお肉の代わりに植物性タンパク質を摂取すべきなのでしょうか。
植物性タンパク質は地球温暖化を食い止める!?
私たちがお肉を食べるには、鶏・豚・牛などを育てなければなりません。しかし、これらの家畜から排出されるメタンが“地球温暖化” の原因として問題になっているのです。
とくに、牛のゲップや排泄物にはメタンが多く含まれており、二酸化炭素の約と言われています。農林水産省による調査で、日本はそのため、主要なタンパク質源であるお肉を控えて、その代わりに植物性タンパク質をとり入れることは環境に貢献することにつながるのです。
植物性タンパク質は、水資源と食糧問題を食い止める!?
日本に住んでいると「水不足・食糧難」という話はピンと来ない問題ですが、世界的に増え続ける人口に対して、水や食糧不足問題が懸念されています。お肉を食べることは、この問題を加速させてしまうのです。なぜなら、家畜を育てるために広大な土地や大量の穀物(エサ)が必要となり、その穀物を育てるために大量の水が必要になるからです。私たち一人一人がお肉の代わりのタンパク質源として植物性食品を食べることで、水と食料不足問題を食い止めることにつながります。
食卓に積極的に植物性タンパク質を
「植物性タンパク質」は、健康面でのメリットはもちろん地球環境にもやさしい食資源であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。食が細くなってきたという中高年の方は、低栄養になりやすいので意識的にタンパク質をとることが大切です。あっさりと食べられる大豆製品などを積極的にとり入れましょう。不足しがちな食物繊維も同時に補給して、いつまでもイキイキとした毎日を送りましょう。
管理栄養士ライター
管理栄養士として病院や保育園などで給食管理や栄養相談・調理に携わってきました。現在は、文章で正しい健康情報を発信し読む人の生活を豊かにしたいという思いで管理栄養士ライターとして活動しています。プライベートでは、パワフルな子ども3人の母として毎日奮闘中。