海藻類は、食物繊維やミネラルが豊富な食品で、しかも低エネルギー。主成分は食物繊維の一種である多糖類で、抗がん作用などの健康効果が注目されています。しかし、体に良いからといって摂りすぎるのはよくありません。
そこで、今回は海藻類の栄養と効能、1日の適量について解説します。
海藻の主な栄養と効能は?
ヨウ素
ヨウ素は、魚介類や海藻類に多く含まれる微量ミネラルです。ヨウ素が海水に多いため、魚介類や海藻類、特に昆布に多く含まれています。
カルシウム
カルシウムは人体内に最も多く存在するミネラルで、体重の1~2%あります。カルシウムは、骨や歯の主成分で99%が骨と歯にあり、丈夫な骨や歯を作るのに欠かせません。
カリウム
カリウムは、成人の体内に体重1kgあたり約2gあり、大部分は細胞内に存在します。ナトリウムとともに細胞の機能を支える、生命活動の維持に必須のミネラルで、野菜や果物、いも類、海藻類など植物性食品に多く含まれています。カリウムは腎臓で尿へのナトリウムの排出を促し、食塩の摂り過ぎによる高血圧を予防するとされています。
フコイダン
フコイダンは海藻のぬめりの部分に含まれており、水溶性植物食物繊維の一つです。わかめやこんぶ、特にもずくやめかぶに多く含まれています。免疫力をアップしたり、血圧の上昇を抑える、肝機能を良くするなどの効果が期待されています。
アルギン酸
アルギン酸は海藻特有のねばねばのもとで、水溶性食物繊維のひとつ。特にコンブ科の海藻に多く、乾燥こんぶには総重量の20~30%含まれています。
海藻類は1日にどれくらい摂ったらいい?
野菜と海藻類で1日350g以上摂ることを心がけよう
海藻類そのものの1日の摂取量の決まりは特にありませんが、350g以上の野菜=野菜料理小鉢4~5皿分(1皿あたり70~100gの野菜で計算)のうち、1皿分ぐらいを目安に摂るとよいでしょう。
例えば
・ひじきの煮物で1皿分
・わかめを味噌汁の具に入れる
・わかめの酢の物で1皿分
など、海藻類に偏ることなく、野菜も含めさまざまな食品を適量摂るようにしましょう。
海藻類を摂りすぎると?
食事で食物繊維を大量に摂取することは事実上難しいため、摂りすぎることのリスクは考えにくいでしょう。しかし、海藻類は消化しにくい食品なので、体調が悪いときに一度にたくさん食べることで、下痢を起こしたり、体に必要な栄養素の吸収が妨げられると考えられます。
海藻類にはヨウ素も多く含まれています。ヨウ素は海水に多く含まれるため、食品では海藻類や魚介類、その中でもこんぶに非常に多く含まれています。「日本人の食事摂取基準2020年版」では、ヨウ素の1日の許容上限量(ほとんどすべての人々が過剰摂取による健康被害を起こすことのない最大の量)は3000μgとなっています。
たとえば、こんぶの佃煮(15g:3cm角10枚)で1650μg、ひじき(乾燥5g:小鉢1皿分)で2250μgのヨウ素が含まれています。ヨウ素を摂りすぎると甲状腺が肥大し、甲状腺腫になるリスクが高まります。
以上の理由から、海藻類に偏ることなく、1日一皿分ぐらいを目安に、さまざまな食品をバランスよく摂るようにしましょう。
海藻を食卓に!3つの海藻類を紹介
わかめやこんぶなどの海藻類は古くから食べられており、日本人の食卓に欠かせない食品です。低カロリーでダイエット中の食事や、生活習慣病の予防に役立つのも魅力的ですよね。ここでは、日本で主に食べられている海藻類を3つご紹介します。
わかめは縄文時代の遺跡から出土したり、万葉集に歌われたりと、古くから日本で食べられている海藻です。わかめを現在のように毎日食べられるようになったのはごく最近のことで、1980年以降だとか。 古くから食習慣がある国は、日本と朝鮮半島のみで、消費量が最も多い国は韓国で、日本の倍以上といわれています。
【わかめの特徴】わかめの特徴は、アルギン酸やフコイダンという水溶性食物繊維を含んでいること。高血圧予防やコレステロール値の上昇を抑える作用などの働きが期待されています。カルシウムやマグネシウム、カリウム、鉄、ヨウ素などのミネラルも豊富に含んでいます。
【効果的な食べ方】わかめに含まれているカルシウムは、酢と合わせることで吸収率がアップするといわれています。酢の物にしたり、海藻サラダで酢の入ったドレッシングと一緒に食べるのがおすすめです。
こんぶは、日本人の食生活を支えている食材の一つ。縄文時代末期から食べられていたという説もあります。こんぶは、わかめやひじき、もずくなどと同様の褐藻類に属しています。生物学的に「こんぶ」と呼ばれる種があるわけでなく、主に「コンブ科」に属する種類の海藻の総称です。世界にコンブ科の海藻は30種類以上あり、その約半分が日本に存在するといわれています。
【こんぶの特徴】こんぶはグルタミン酸などのうま味成分が多く、主にだし素材として使われます。水溶性食物繊維である、アルギン酸やフコイダンが豊富に含まれているのが特徴で、これらがぬめりのもとになっています。ヨウ素やカルシウム、カリウムなどのミネラルも豊富に含んでいます。
【効果的な食べ方】こんぶの優れた健康効果を得るには、煮物や昆布巻き、佃煮としてこんぶそのものを食べるのがおすすめです。 だしをとった後のこんぶには、水に溶けない栄養成分が残っているので、捨てずに使い切りましょう。
ひじきはわかめやこんぶと同じ褐藻類です。ひじきは部位によって名前が異なり、茎の部分が「長ひじき」や「糸ひじき」、葉や芽の部分が「芽ひじき」や「米ひじき」「姫ひじき」と呼ばれます。大きく違うのは食感で、栄養成分に大差はないと考えられています。
【ひじきの特徴】ひじきは、鉄とカルシウムの含有量は海藻類でもトップクラスです。食物繊維も豊富で、水分を除いた重量の約半分を占めています。褐藻類に特有の色素成分「フコキサンチン」には、抗酸化作用があるほか、生活習慣病予防効果が期待できます。
【効果的な食べ方】ひじきにはカルシウムも含まれています。ビタミンCを多く含む野菜やいも類と一緒に摂ると、吸収率が高まります。サラダや煮物、チャーハン、炊き込みご飯などに入れて食べるとよいでしょう。
まとめ 海藻を上手に取り入れて健康的に過ごそう!
海藻の栄養と効能、4つの海藻について解説しました。
海藻には、体の機能を維持するために重要なミネラルや食物繊維が豊富に含まれています。積極的に摂りたい食品ですが、海藻をたくさん摂ったからといって、高い効果が期待されるわけではありません。
主食や主菜、副菜を基本に、バランスよく適量の食事を摂ることが大切です。 海藻を上手に取り入れて、健康的に過ごしましょう!

管理栄養士・健康運動指導士・ライターとして活動。 特定保健指導では生活習慣病予防を、介護予防事業では高齢者のフレイル予防と、 食事と運動の両面から健康づくりのお手伝いをしています。